化粧と演技

化粧することと演技することは似ています。もちろんメイクしますが、それだけではないのです。

化粧の由来

英語の「cosmetic」は、ギリシア語のコスメティコスに由来します。その語源は、コスモス、宇宙です。自然鉱物からとった、自然界のものを体に顔につける事によって、宇宙のパワーを身に纏う意味があったそうです。
 
日本の歴史を見てみると化粧は、「けわい」、その意味は、化粧をするというよりは、身支度を整える意味で使われる言葉だそうです。
この「けわい」は、気配に由来していまして、身支度を整える事で、周りの人に気を配る意味です。
 
その語源から分析しますと、化粧には「自分を取り巻くものとの双方向の対話」という意味に集約することもできます。シャーマニズム社会では、人は化粧することによって神と交信していました。

化粧することの演技性

女性が化粧する場合、いつも決まったメイクではありません。仕事の時、仕事帰りの食事のとき、パーティーに出席するとき、恋人に会う時、それぞれの状況において、メイクは変わります。化粧は状況に応じて、つねに更新され、振る舞いも変わります。
 
このとき、脳の中にある1000億の神経細胞がシナプスを「つなぎなおし」、新たな結びつきを作っていきます。脳は、状況の変化や刺激によって、不断に神経細胞をつなぎかえ、柔軟に変化に対応しています。その変化は終わりがなく、脳ほど可塑性の高い臓器はありません。
 
化粧することは演技することでもあります。
 
もちろん、俳優も化粧しますし、場合によっては仮面をつけます。人格のことをラテン語で「ペルソナ」と言いますが、「ペルソナ」とは人格のことです。人間はつねに脳に化粧をしながら、いくつもの仮面を付け替えて、その状況における役割を演じているのです。

大学休学生、不登校生、ニート、ひきこもりの諸君へ!

愚放塾の演劇ワークショップに「モノマネ演技」があります。意外に面白いのが、嫌いな人の真似してもらうことです。初めは躊躇しますが、何度かやってもらっているうちに、だんだん似てきます。似てきたところで、特徴的な部分を誇張してもらいます。そうしていくうちに、本人がその人自身になっていくのです。

後で感想を聴いてみますと、あれほど嫌いだった人がいまでは嫌いではなくなった、むしろ、面白い人として受け入れられるようになったと、異口同音に言います。モノマネをしているときは、今までとは違った「ペルソナ」をつけて演じているのですね。

そして、その「ペルソナ」を自分の者にする過程で、脳では、シナプスの「つなぎなおし」をして、新たな結びつきを作っているのです。結果、嫌いだった人が嫌いではなくなったという「自己変容」が起こったのです。

参考資料
「復学・復帰を目指す大学休学生、不登校生に『演劇の力』で目覚めてほしい」
「演技の力」
「動的平衡性と自己変容」